2024年11月24日、「加藤亮佑さんと楽しむ ポンポン・ツアー特別編」を開催しました。
ポンポン・ツアーは、通常、展示室と別館を歩いてご案内していますが、今回は、俳優の加藤亮佑さんをゲストに迎え、別館「彫刻家のアトリエ」の中で開催しました。
内容は、フランソワ・ポンポンと「彫刻家のアトリエ」、そしてポンポンにまつわるエピソードについて、加藤さんと学芸員・松下が一緒にご紹介していくものになりました。好奇心旺盛な加藤さんから飛び出す楽しい質問に学芸員が答え、そのやりとりの合間に、加藤さんが関連するエピソードをリーディングするという、解説会と芝居が組み合わさったような形式です。
エピソードは、ナレーションで楽しむ 別館展示「アトリエの訪問者」 | 群馬県立館林美術館 (pref.gunma.jp)でも紹介している、同時代の人が伝えるポンポンの姿と人柄、アトリエの様子などの他、ポンポンのなめらかな彫刻の起源についての重要な一節も取り上げました。
終盤で加藤さんは、「彫刻家のアトリエ」の奥からロフトに上がり、長いエピソードをリーディングしてくれました。
そのエピソードは、1922年11月、≪シロクマ≫の発表直後に書かれた、ある雑誌の記事から翻訳したものです。
展覧会で≪シロクマ≫が驚きをもって評価されたこと、下積み時代の長かったポンポンの彫刻家人生の歩み、そして67歳でもまだ若々しい精神を持つポンポンについて、情熱的に伝えるその記事は、加藤さんの落ち着いた力強いリーディングによって、聞く人を引き込むドラマとなりました。
エピソードの後半、ポンポンが夜、ろうそくの光で作品を見せてくれたという場面では、会場を暗くし、ランタンの光のもとで加藤さんが語る情景描写に耳を傾けました。
締めくくりは、サロン・ドートンヌで祝宴会が開かれるという知らせを受けた時のポンポンの様子です。何も言わず、静かに涙したポンポン。記事が伝える祝宴会の日にちは、(1922年)11月25日と、奇しくもこのイベントの翌日の日付でした。
ポンポンの作品と人生をたどる、トークとリーディング上演は、ここで幕を閉じました。
ポンポンは、自身で言葉を書き残すことはしなかったため、ポンポンを理解するには周りの人が伝える言葉が頼りとなります。
人が語った言葉を、その背景にある状況や情感を含めて表現する俳優の方に読んで頂くことで、アトリエで話を直接聞いているような気持ちになるのではないか。
ここからスタートしたナレーション展示とポンポン・ツアー特別編の企画に、対話と試行錯誤を重ねながら、多くのアイデアとアドバイスをくださり、実現に向けてご尽力をくださいました加藤亮佑さんに、心より感謝を申し上げます。
今回の試みを今後のフランソワ・ポンポンの普及紹介につなげていきたいと思います。