ブログ

「鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展」オープン記念トーク、記念講演会を開催しました(2025.4.26, 5.25)

 

鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展」では、出品者・監修者の鹿島茂氏をお迎えしたイベントを会期中に2回、開催しました。

1.「オープン記念トーク+サイン会」(2025年4月26日)

展覧会の初日に行ったトークは、鹿島氏がなぜグラフィックに注目してきたのか、また本展の眼目がどこにあるのかというお話から始まりました。

グラフィックは、複製技術を前提とし、対象は不特定多数という一種の工業製品であるため、ファインアートより価値が低いとされてきた、また、古書収集の世界では雑誌は邪道とみなされてきた、と鹿島氏は言います
しかし、雑誌のグラフィックの面白さを自身の眼で発見された鹿島氏は、1990年頃より雑誌収集を始められました。それは、最初は点だったのが、長い年月を経て線につながっていったそうです。

 

 

さらにその線から面を見出そうとするのが今回の展覧会です。20世紀フランスにおいてモダンがいつ誕生し、どのように展開したのか。鹿島氏が注目してきた、この時代の傑出した編集者リュシアン・ヴォージェルを軸に入れて展覧会を構成したことにも触れられました。

トーク後半は、展覧会のほぼ全作品の解説をして下さり、30分の予定が1時間に延びて、充実したトークとなりました。終了後、エントランスホールで行ったサイン会では、参加者の皆さんそれぞれが鹿島氏との交流を楽しまれた様子でした。

 

 

 

2.記念講演会「フランスのモダングラフィック」(2025年5月25日)

講演会は、鹿島茂氏が自らを「コレキュレーター」と呼ぶ、造語の話から始まりました。雑誌・本を集めるコレクターというだけでなく、それらを展示して見せるキュレーターとして作品集めをしてきたということです。

さらに、雑誌という「集団芸術」のとらえ方について、かみ砕いてお話下さいました。それは、ヴァルター・ベンヤミンという哲学者の『パサージュ論』に由来する考え方で、個人が協力して生み出す集団芸術において、個人は覚醒していても集団では夢を見ており、時代を経ないと夢を見ていたこと気づかないというものです。そこから鹿島氏は、「雑誌は全号持っていないと意味がない」という、徹底した収集哲学にもとづきコレクションをされてきました。

 

 

鹿島氏独自の視点と考察に、美術館の調査研究が加わった今回の展覧会は、グラフィックというジャンルの歴史の一部を立体的に示す、これまでにない試みとなりましたが、それを成立させているのは、鹿島氏の収集の思想と哲学、その実践的なコレクションであることに改めて気づかされるお話でした。

後半の展覧会の構成に沿った作品解説の合間には、収集時のさまざまな苦労話も披露して下さり、しばしば笑いもおこる、楽しい講演会となりました。

 

SNSでシェアする

XLINE

一覧に戻る

トップへ戻る