開催終了 企画展

国吉康雄展

国吉康雄(1889-1953)展-アメリカンドリームの光と影-福武コレクションによる絵画・版画・素描・写真

2008年9月13日(土) ~ 2008年11月30日(日)

国吉康雄は岡山県に生まれて少年時代に渡米し、アメリカで働きながら美術の勉強を始め、最終的にはアメリカを代表する画家の一人とみなされるまでになった美術家です。海外で成功をおさめた画家として、パリで活動した藤田嗣治(1886-1986)と双璧といえる存在で、まさにアメリカンドリームを体現した日本人であると言うことができます。現代でいえば美術界の野茂やイチローのような存在と言えるでしょうか。
国吉は油彩画を中心に、テンペラの一種であるカゼインや、エッチング、リトグラフ(石版、亜鉛板)などの版画、インクや鉛筆による素描など、幅広い技法の作品を手がけました。憂愁をただよわせる女性像や牛(国吉は丑年でした)、ピエロなど道化のイメージが、その作品には頻繁に現れます。他にも風景や静物など、多くの画題を手がけた国吉ですが、作品の色彩や全体の雰囲気は、必ずしも明るいものではありません。
こうした傾向は国吉の作品に終生一貫しているといっても良く、安易にその理由を求めることはできませんが、第二次世界大戦が勃発した際に、敵国である日本国籍を持つ存在としてアメリカに暮らしていたことは、国吉の人生を間違いなく複雑なものとしています。成功という光と戦争という影。この二つがアメリカで暮らす日本人画家である国吉の人生には、絶えずつきまとったことでしょう。
福武コレクションによる名品150点以上をご覧いただくことで、その色彩・画肌の魅力に目をゆだねながら、国吉の人生をたどっていただけたことと思います。美術鑑賞や思索にふさわしい秋の季節に日本人とは何か、アメリカとは何か、戦争とは何かなどを考える貴重な機会にもなったのではないでしょうか。
本展では、群馬県立近代美術館所蔵の国吉康雄作品もあわせて展示し、国吉と同時代にアメリカで活動した群馬県中之条町出身の画家・トーマス永井(1886-1966)の作品も紹介しました。
なお国吉は、生活のために友人の美術作品を撮影したことからはじまって、後にドイツの小型カメラ、ライカによる写真制作も行うようになり、1930年代末に撮影したものが福武コレクションに数多く含まれています。その写真は優れた造形感覚による形態的魅力と同時代の美術家たちや当時の風俗をしのばせる風景などの被写体の魅力を兼ね備えたものです。今回は66点というまとまった点数を前後期に分けて展示しました。
また群馬県立近代美術館の所蔵品から、国吉作品だけでなく、国吉と交流の深かったジュール・パスキン(1885-1930)や仲田好江(1902-1995)の作品もご紹介しました。その他にジャクソン・ポロック(1912-1956)の師でもあるトーマス・ハート・ベントン(1889-1975)に学び、国吉と同時代にアメリカで活動した群馬県中之条町出身の画家、トーマス永井(1886-1966)が描いた県内に所蔵されている作品も展示しました。

会期
2008年9月13日(土)~11月30日(日)
前期:9月13日(土)-10月19日(日)/後期:10月22日(水)-11月30日(日)
※版画、素描、写真をすべて展示替えします。
観覧料
一般800円(640円)、大高生400円(320円)
※( ) 内は20名以上の団体割引料金
※中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方とその介護者1名、および県民の日(10月28日)に観覧される方は無料
主催
群馬県立館林美術館
特別協力
福武總一郎氏、岡山県立美術館

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