建築について

About the architecture

建築について

当館は、群馬県館林市、多々良沼の北東に位置します。冬には白鳥の飛来する多々良沼周辺の自然豊かなこの土地は、「自然と人間の関わり」を活動のテーマとする当館にふさわしい立地として選ばれ、美術館建設は、多々良沼公園の整備とともに進められました。

美術館のランドスケープ

建築設計は第一工房[代表:高橋靗一(ていいち)]によるもので、7.5haの敷地全体のランドスケープデザイン(設計:オンサイト計画設計事務所)と一体的に構想されています。美術館のランドスケープは、北に多々良川、南東に湿地、南西に水田という原風景を残す平坦な土地の中、修景池とアースワーク(造形的盛土)で囲むことによって独立した形となり、「「水面」に浮かび上がる「島」」がイメージされています。

美術館の建物へのアプローチ

美術館の建物へのアプローチは、駐車場から始まり、修景池の橋を渡り、カーブを描くカスケードに沿ってつながります。建物の前に広がる芝生の前庭は、わずかに傾き、水平の風景の中で視線や動きを誘導します。

大きなガラス面の開口を持つ展示室1

建物の中心に位置するのは、大きなガラス面の開口を持つ展示室1です。コレクションのフランソワ・ポンポンなど、彫刻を中心に展示するスペースとして作るにあたり、高橋靗一は「巨大な木の葉のハッパの陰に動物たちが憩う姿」を想像したと言います。そして、「地中に中心をもつ円錐」と「天空に中心をもつ球殻の一片」から、傾斜する天井と湾曲する壁を導き出し、独特の空間を生み出しました。

200mの長さで弧を描くギャラリー

レストラン、ミュージアムショップ、展示室2、3、4をつなぐのが、200mの長さで弧を描くギャラリーです。前庭を包み込む全面ガラスのギャラリーは、外の風景と視覚的にまた動線的に連続性を持っています。「石、アルミ、ガラス、水などの素材のスケール、テクスチャーを意識しながら、ディテールをできるだけ単純化し、空間を分節する線を最小限にした」という設計の意図は、空間に身を置き、歩くことで、体感されるでしょう。

フランソワ・ポンポンの資料を展示する「彫刻家のアトリエ」と造形活動を行う「ワークショップ室」のために作られた別館

ギャラリーを進み、外に出ると、モダンでシャープな本館とは対照的な雰囲気の「別館」が建っています。別館は、フランソワ・ポンポンの資料を展示する「彫刻家のアトリエ」と、造形活動を行う「ワークショップ室」のために作られた建物です。ポンポンの生地にちなみ、フランス、ブルゴーニュ地方の農家を参考にしており、ヨーロッパの屋根瓦と石灰岩の乱積みによる外観をそなえています。周囲には散策するための遊歩道が配され、カツラのボスク(樹木の寄せ植え)の季節ごとの風情が前庭の芝と別館をつないでいます。

建築概要

設計
第一工房
構造設計
川口衛構造設計事務所
機械設備設計
環境エンジニアリング
外構設計
オンサイト計画設計事務所
サインデザイン
キジュウロウ・ヤハギ
構造
鉄筋コンクリート造
建築面積
5,742.85m2(本館5,436.53m2、別館306.32m2
延床面積
6,856.47m2(本館6,477.50m2、別館378.97m2
階数
地上2階(本館、別館とも)
外部仕上げ
アルミパネル・花崗岩(本館)・石灰岩(別館)
主要床材
石灰岩(展示室1、ギャラリーほか)、複合フローリング[ビーチ](展示室2-4)、テラコッタタイル(別館)
竣工
2000年12月1日
開館
2001年10月26日

受賞

2002年
第43回BCS賞/群馬県立館林美術館、群馬県、館林市、第一工房、株式会社大林組、河本工業株式会社、りんかい建設株式会社
2003年
平成14年度日本造園学会賞(設計作品部門)/群馬県立多々良沼公園/群馬県立館林美術館ランドスケープデザイン:長谷川浩己(オンサイト計画設計事務所)
2004年
第17回村野藤吾賞/群馬県立館林美術館、高橋靗一(第一工房代表)

主要参考文献、サイト

  • 『高橋靗一/第一工房1960-2005』TOTO出版、2003年
  • オンサイト計画設計事務所 
    https://www.s-onsite.com/works/detail.html?id=41
  • 『建築ジャーナル 別冊 第一工房特集』2001年11月
  • 『新建築』2002年1月号、pp.100-113, 223
  • 『日経アーキテクチュア』No.708、2001年12月24日号、pp.8-14
  • 『GA JAPAN』No.54、2002年1-2月号、pp.10-37
  • 藤森照信『藤森照信の特選美術館三昧』TOTO出版、2004年、pp.264-275
  • 『GA JAPAN』No.129、2014年7-8月号、pp.164-175
  • 『建設業界』vol.50、2015年6月号、pp.46-50
  • 『建設業界』vol.51、2015年7月号、pp.46-50

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